コンテンツ産業には古くから海賊版がつきものでした。デジタル化、ネットワーク化が進むことにより海賊版は爆発的な勢いで拡がり、インターネットを見渡せば音楽、ゲーム、映画、マンガなど山のように跋扈しています。それに対してコンテンツの供給側は、ただ手をこまねいていたわけでなく、これまでにありとあらゆる対策がとられてきました。
最近になり、海賊版対策はようやく落ち着いてきたように感じています。コンテンツ供給の手段が、これまでと変化してきました。最近の潮流としては、一部無料開放による制限付サービス利用、有料会員のみの無制限利用といった形態に分けることにより、コンテンツ単体を購入するのではなくサービス全体の利用料として課金する形式が増えました。
スウェーデン発の音楽サービスSpotify
開業当初から「海賊版撲滅」を掲げている音楽サービスのSpotifyは、月額980円で4000万曲が聴き放題、フリープランでもサービスの概要は楽しめます。月980円支払ってでもこのサービスを利用するメリットは、プラットフォームの扱いやすさでしょう。今どの曲が人気なのか、他の人はどんな曲を聞いているのか、曲を探して自分のプレイリストに追加したりシェアしたり、その利便性が「わざわざ海賊版を探してダウンロードしてストレージを割いて音楽を聴く」ことより優っているため、世界を席巻することになりました。
音楽ストリーミング「Spotify」はどうやって音楽業界に貢献しているのか? - GIGAZINE
Spotifyが化粧品販売にも乗り出す、主催音楽イベントWho We Beのチケットは完売 | TechCrunch Japan
YouTubeを超えたNetflix
映像分野ではNetflixが躍進しています。Netflixも同様に、月額650円からの映像見放題というサービスを行っております。こちらはフリープランはなく、1ヶ月の無料体験がついてきます。Netflixはアメリカで大躍進を遂げ、YouTubeの視聴時間を上回るようになりました。たとえ有料のサービスであっても、プラットフォームの利便性と優良なコンテンツが、無料で違法アップロードだらけのYouTubeを凌駕することになりました。
あらゆるビジネスは「ネットフリックス化」し、地球を救う|WIRED.jp
一番面白いのはNetflix —— ミレニアル世代の79%が支持、競合を圧倒 | DIGIDAY[日本版]
書籍の海賊版を撲滅するには
デジタルコンテンツとしての書籍は、音楽や映像ほど世の中に受け入れられていないのが現状です。世界的に見てもいまだ紙の本の人気が高く、電子書籍が普及してきたとは言え、音楽や映像に比べればまだまだアナログが強いです。
そして書籍においてはいまのところ、SpotifyやNetflixのようなサービスが流行する兆しを見せていません。そのためいまだ海賊版が根強くはびこっており、供給側によっては電子版が海賊版として出回りやすくなることを避けようと、電子化を拒絶する事例もあります。
東野圭吾の中国市場撤退問題を考える=海賊版を当然と考える中国の消費者―北京文芸日記 | KINBRICKS NOW
サービスとしてはKindle Unlimitedのようなものもありますが、内包するコンテンツが少なく、使い勝手もそれほどよくなく、SpotifyやNetflixのような爆発的拡がりを見せていません。しかし今後もし海賊版を撲滅したいのであれば、この方向は避けて通れないでしょう。
求む、電子書籍のサブスクリプションサービス
Kindle Unlimitedの課題は、コンテンツ供給数、プラットフォームの利便性と、ほぼ課題しかない状態です。もしかするとAmazonではなく、SpotifyやNetflixのように全く新しい会社が参入して天下を取ってしまう可能性も、無きにしもあらずです。出版社の壁を破り、良質な翻訳家を抱き込み、「海賊版よりもお金払って使用したほうが便利」と思わせるような世界を席巻する書籍のサブスクリプションサービスが登場する日を夢見て、「電子書籍で行こう。」では電子書籍を応援し続けていきます。